星海社新書の本格ミステリ評論系書籍が面白い

本格ミステリが好きです。近年は小説だけでは飽き足らず、評論系の書籍にも手を出しています。1冊読むごとに、何故か読みたい本・読み返したい本が雪だるま式に増えていくので困る。

さて、最近は星海社新書から好みの本が立て続けに出版されており、何だか嬉しくなったので3冊分の感想をまとめます。

佳多山大地「新本格ミステリを識るための100冊」

ミステリ評論家・佳多山氏の書籍。

「十角館の殺人」から2010年代の作品までを網羅した、まさに令和版。選出基準は著者の好みではなくあくまで「新本格ミステリを識(し)る」ことにあると前置きされています。個人的には、いわゆる第一世代の作家について、デビュー作だけではなく「法月綸太郎の功績」や「鍵の掛かった男」など中期以降の作品も選ばれているところが嬉しい。どちらも大好きな1冊です。100冊すべてを読み尽くしたいところですが、絶版でも容赦なく選出されているため道のりは遠い。

余談ですが、新宿の某大型書店にて、書店員さんがこの100冊を1冊ずつ読み進める経過を店頭の平台にアルバム形式で展示していました。数ヶ月後に再度訪れた際にはそのアルバムが見当たらなくなっていましたが、お元気で読み続けているのだろうか。

 

飯城勇三「エラリー・クイーン完全ガイド」

エラリー・クイーン研究家・飯城氏の書籍。

クイーンの作品を隅から隅まで網羅しており、読んだことのあるものからないものまで、あらすじを読むだけでも面白い1冊です。興味を惹かれる古い短編集を見つけ、絶版かもしれない…と思いながら検索するとKindle版がありました。便利な時代に感謝したい。

また、特に印象的だったのが、現在異なる出版社から新訳を出版中の翻訳家2名による寄稿です。いわゆる「キャラ設定」についての裏話が面白い。お二方は「主人公のエラリーが、父であるクイーン警視に対し敬語とタメ口のどちらを使うか」について異なる考えを仰っており、これは2冊並べて読むしかないなと思いました。

 

円居挽「円居挽のミステリ塾」

ミステリ作家・円居氏が聞き手となり、他のミステリ作家5名の創作の裏話を聞く形での対談集。

円居氏の代表作「ルヴォワールシリーズ」を愛読しているので、0番手として裏話を聞くことができたのも嬉しい。著者の趣味全部詰めのあの世界観が大好きで、場所を変えていくつも公開されている同じ世界線の作品を余すことなく読んでいます。

1番手の青崎氏は、私と同じ年かつはやみね作品がミステリの入り口であったという共通点もあり、世間の流行りにも言及した読書遍歴を眺めるだけで面白い。陰の者に誘われて新しい読書体験をする話も羨ましい。その他の印象的な箇所としては、ミステリの組み立て方として、まずシチュエーション(どんな事件が起こるか)から考える、という話が意外でした。また、裏染シリーズの終着点の話が気になって仕方がない。

そして、回を追うごとにどんどん対談相手の個性が強くなっていき、本来の対談の意図とは少しずつずれが生じてきている(もはや読者の参考にならない)のもまた面白い。

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