【今日の日はさようなら】癖が強すぎる脇役・原田くんとまた会う日まで【24時間テレビドラマ】

今年の24時間テレビを見ながら、過去の印象的だったドラマについて書きます。

2013年の日テレ24時間テレビ内で放送された、大野智さん主演のスペシャルドラマ「今日の日はさようなら」です。

「今日の日はさようなら」の魅力

幻想的な世界観

まず印象的な点として挙げたいのが、映像の美しさ。当作は山梨県を舞台としており、随所で街の風景(県庁付近から郊外、桃畑まで)が映し出されています。要所要所で登場する白鳥ボートの湖、病院の屋上から見える空、そして瑞々しい桃。主人公の耕太や母の作る美味しそうな料理も鮮やかな色どりを加えています。また、ピアノをメインとしたBGMもとても美しい。闘病をテーマとしたドラマですが、全体的に幻想的な優しい世界観が漂っています。

主人公・耕太のフラットさ

主人公の富士岡耕太は、悪性リンパ腫を患い闘病生活を送ります。優しい家族に囲まれる耕太ですが、発病前から決して口数は多くなく、淡々とした性格でした。その気質は闘病が始まってからも変わりません。急に前向きになることもなく、かといって極端に自暴自棄になることもない。発病をきっかけに人間性が大きく変わってしまうよりも現実味があるなと思いました。淡々と物語が進む様子が、先に述べた世界観ともよく合っています。

綺麗ごとだけではない現実

映像は幻想的ですが、ストーリーは美しいことばかりではありません。始めは懸命に看病していた耕太の彼女・絵津子は、次第に生存率が下がっていく耕太の前に姿を現さなくなります。また、耕太の姉・小春は婚約中でしたが、婚約者は骨髄提供をする小春を目の当たりにし、心が離れて行きます。家族の結束は固くありますが、その一方で周囲の人間が離れて行く様子も容赦なく描かれています。

また、耕太は物語の後半で余命宣告を受けた後、抗がん剤治療を辞める選択をします。辛い現実を受け入れ、死ぬことにきちんと向き合おうとする耕太の姿からは淡々としながらも強い覚悟を感じます。

また、見ていて微笑ましいのですが、最もリアルだなと感じたシーンは、耕太と父が二人きりだと無言になるところです。仲が悪いわけではないが、お互いかける言葉が出てこない。そして家族にかける「大丈夫」という言葉が口癖の父が、耕太の最期を目の当たりにし、どのような行動に出るか。とても印象的な場面なので、是非本編をご確認ください。

そしてここからは、耕太の病院内での友人となる入院患者・原田くんについてです。山田涼介さんが演じています。

癖が強すぎる脇役・原田くんの魅力

「原田くん」とは

気が付くと既にそこに居るため、あまり作品内で名前を呼ばれることがなく多少の違和感がありますが「くん」付けしておきます。

幼少期より白血病を患う義足の青年・原田信夫。耕太が入院することになった病院で、小児病棟の頃から入退院を繰り返す生活をしています。今まで46人もの顔見知りの死を見届けてきた経験から、日々生きることに執着しないよう自らを律しています。

原田くんは新参者である耕太に対し、もはや自分の家のようになった病院内を案内し、その後も体操を日課とする入院患者・呼吸さんやカウンセラーの大久保さん、小児病棟の子供たちなど病院内の知人と耕太とを引き合わせてくれました。

出来事だけを羅列すると社交的で世話好きのように思えますが、原田くんは人懐っこさはあれど、独特の世界観と大きな陰があり、いつの間にか現れ瞬きもせずにじっと佇んでいるような、得体の知れないところのある青年です。

病院で過ごす日常の生活

病院内をゆっくりとマイペースに歩き回り、知り合いに声をかけて回る原田くん。作品内で描かれた彼の日常生活の中で、印象的だった場面を2つ挙げます。

原田くんの恋心

耕太とカウンセラーの大久保さんとの3人でババ抜きをするシーンがあり、そこで原田くんが大久保さんへ恋心を抱いていることが分かります。耕太もすぐに気が付くほど分かりやすい。

気になるお姉さんの手に誤って触れてしまいもにょもにょする表情だったり、そのことを耕太に触れられそうになった際に何とも言えない微妙な表情をしたりと、台詞がなくても顔色で気持ちが伝わってきます。

原田くんの狂気

本作で唯一の問題シーンです。病院内である人物が亡くなったことをきっかけに、原田くんは耕太をとっておきの場所に連れ出します。提案した際の瞳孔の開き切った顔もなかなかの恐ろしさですが、とっておきの場所で原田くんが浮かべる恍惚の表情が忘れられない。美しいのですがぞっとします。耐えきれず逃げ出す耕太に同情してしまう。

この部分だけ突如ホラーに転じるため、放送時はネットで原田くんが死神呼ばわりされていました。

耕太の死による心境の変化

作品の前半部分での原田くんの心境は「生きることに執着しないようにするため、人を好きになる気持ちに蓋をしたり、生まれたばかりの赤ちゃんを見ないようにしている」というものでした。長年の病院暮らしで、いつ自分の病状が悪化するか分からない状況の中、自分の人生に過度な期待をしないようにしているのだと思うと心が痛みます。

その気持ちは、余命宣告を受けた耕太の姿を間近で見ることで「やっぱり怖い、死にたくない」に変わります。親しい人の死を何度も見届けてきた原田くんですが、戸惑いながらも余命を受け入れ、残り少ない時間の過ごし方を考える方向に進もうとする耕太の姿に何かを感じたのかもしれません。

そして、耕太の死後は、新生児室の前で佇み笑顔を見せる場面がありました。生への執着を捨てるのにはまだ早すぎるということを、耕太の生き様を見て学んだのだと思います。カウンセラーの大久保さんに対しても、素直に気持ちを伝えられているといいのですが…。

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