映画「BAD LANDS」をひたすら見ていた2週間だった。
↑ 映画の大筋のみに触れた感想はこちら
※以下は映画を見ながら考えたことをまとめた内容であるため、物語の内容はもちろん、結末にも触れています。映画を見終えた方のみご覧ください。
ネリとジョーの年齢は?
映画の冒頭で、ネリ10歳・ジョー8歳で親同士が再婚したことが分かる。(年齢差2歳)
また、高城のオフィスでジョーが書いている履歴書によると、
- この日は令和3年12月10日(金)
- ジョーの生年月日は平成7年8月4日
このことから、ジョーは26歳。そして2歳年上のネリは28歳。
また、後のシーンでネリの誕生日が8月20日であることが判明するため、ネリの生年月日は平成5年8月20日となる。
(映画公式Instagramにネリのパスポート写真がありました。1993年生まれで確定。)
作中に登場する情報を元に2人の経歴をまとめてみた。
- ネリ10歳まで:高城(ネリ父)のいる大阪で暮らす
- ネリ10歳・ジョー8歳:ネリ母とジョー父が再婚
- ネリ15歳・ジョー13歳:ジョー父を殺害し死体を遺棄
- ネリ15~25歳:ネリ母死亡、以降東京で10年近く生活
- ネリ25歳:胡屋から逃げ、各地を転々とする
- ネリ26歳:高城の元へ16年ぶりに戻る
- ネリ28歳・ジョー26歳:ジョーが(2回目の)出所
他にも、ジョーの履歴書には「どうろこうつうほういはんでつかまる」「ぼうこうでつかまる」と書かれているように見えるが、年月まではまだ読み取れていない。
コーヒーをかき混ぜ続ける姉弟
山田涼介さんが大阪の舞台挨拶で印象的だと話していた、2人の関係性の象徴ともいえるシーンについて。
ネリとジョーが2人揃ってコーヒーを飲む場面は作中に4回登場する。
- 月曜日の夜(BAD LANDSのカウンター)
- 金曜日の昼(下見後の喫茶店)
- 土曜日の朝(ラブホの室内)
- 日曜日の昼(BAD LANDSのカウンター)
全てのシーンでネリとジョーはコーヒーに砂糖を入れ、暫くの間スプーンでかき混ぜ続ける。その理由は喫茶店のシーンでジョーの口から語られるが、離れて暮らした時間の方が長いにもかかわらず、昔の習慣が2人の身体にずっと染み付いているのかもしれない。
ジョーが連呼する「腐れ縁」が最も可視化されているシーンである。
「腐れ縁」が変化した瞬間
2人の間にある「腐れ縁」。序盤にジョーが「そんじょそこらの腐れ縁とは縁の筋がちゃうで」と言った通り、ただの血縁関係のない姉弟ではなく、殺人と死体遺棄という秘密を共有していたことが物語の中盤で明らかになる。
しかも、ジョーが実父を殺害したことにより、ネリは性的虐待から逃れることができた。このことからネリとジョーの間には大きな「貸し借り」が発生している。そのうえ、この件がバレてしまえば共倒れとなる。どんなに血の繋がらない弟が方々でトラブルを起こしても、今までは世話を焼き続けるしかなかった。
しかし、ネリもジョーを守るために実父である高城を殺害することになる。「これでおあいこや」というネリの言葉通り、思わぬ形で2人の間の貸し借りがゼロになった。
この瞬間から、ジョーに対するネリの態度が硬化したようにも思える。ジョーがあれほど固執していた2人の「腐れ縁」は、ここから徐々に脆くなっていったのかもしれない。
ジョーが躊躇なく銃を構える条件
こちらは京都の舞台挨拶で触れられており、気になっていた件。
作中でジョーが(特定の相手に対して)銃を構えるシーンは次の4つ。
- ヒットの依頼先(アロハの男)
- 高城のオフィス(高城)
- 高城のオフィス(残間弟)
- 東京の会見会場(胡屋)
1のシーンでアロハの男に銃口を向けたジョーは、情けないほど震えていた。しかし、2以降は見違えるほどにしっかりと構えている。4のシーンは曼荼羅の指導が入った後のため当然かもしれないが、1と2以降の違いは一体何なのか。最も可能性の高い答えは「ネリの邪魔をする者」であるかどうかだと思うが、もう一捻りありそうな気もする。
気になる点がもう1つある。
1のシーンの直前、残間兄弟が依頼主(タクヤ)に対し、今から自分達が襲う相手は何故殺されなければならないのか、モチベーション維持のために教えるよう迫る場面がある。その時、ジョーは訳が分からないという表情で首を傾げている。
残間兄弟は、殺す相手が善人か悪人かということを重要視している。しかし、ジョーにとってはどうでも良いことだったようだ。自分が撃ちたいか撃ちたくないか、というある意味シンプルな動機で動いているのかもしれない。
また、ジョーという人間の恐ろしさは4よりもむしろ3の銃撃に現れていると思う。つい先程までつるんでいた人間であっても、邪魔だと感じたらその瞬間に撃つ。感情的なのか理性的なのか、よく分からない。
曼荼羅は何をしたのか
物語の終盤で、姉弟の協力者となる元ヤクザ・曼荼羅。形は違えど、曼荼羅もジョーと同じくネリのことを愛しており、ネリの邪魔をする者は排除しても構わないと考えている。
その曼荼羅とジョーが、ついに顔を合わせる時が来る。戦闘術の習得を通じて、短時間でジョーは曼荼羅に心を許した様子。あのお金にうるさいジョーが、曼荼羅の取り分を認めているのは相当なことである。では、曼荼羅はジョーのことをどう捉えていたのか?
少なくとも(連絡が途絶えたジョーを全く気にしていないことから)ジョーが東京へ向かったことと、その目的、そして死を覚悟していることは知っていたと思われる。
さらに意地悪な見方をすると、ジョーが自ら胡屋への襲撃を決断したことは間違いないが、その決断は無意識のうちに曼荼羅によって後押しされたものではないだろうか?
曼荼羅が呟く「当たって砕けろ、いい言葉や」「クレイジージョーは僕と同じクレイジーなこと考えているんか?」という言葉は、捉え方によっては崖の上に立つジョーの背中を押しているようにも感じられる。曼荼羅にとっては、ジョーも胡屋と同じくネリの邪魔をする厄介者のように見えたとしても不思議ではない。
以上、すべて考察という名の個人の妄想です。