【平泉編】ひとり卒業旅行として、源義経ゆかりの地を巡った話・その1【中尊寺】

今から10年ほど前の秋、私は大学4年生だった。

幸いなことに就職活動を終えており、また卒業に必要な単位も既に取り終えていた。そのため、4月からの社会人生活という時限爆弾を抱えつつも、人生最後の自由時間を大いに満喫していた。

ただ、満喫していたといっても、当時から出不精でお金もそれほどなかったため、遅い時間に起きて自宅でゴロゴロしていただけだった。今思うとそれだけでも涎が出そうな贅沢な時間だ。

大学の夏休みが明ける頃にようやく気が付いた。今は閑散期だろうから、旅行に行くべきではないか、と。ただ、特に訪れたい観光地はなかった。昔からオタク気質であったため、好きなアイドルのライブや好きな小説の聖地巡礼などの動機がないとどうにも身体が動かないのである。

どうしたものかと考える中、唐突に思い出したのが、2005年に放送されたNHKの大河ドラマ「義経」だった。

2022年の源義経といえば菅田将暉さんだが、あの頃、中学2年生だった私にとっての義経様は滝沢秀明さんだった。滝沢さんの義経は身も心も美しく、それゆえ人を疑うことを知らず、結果的に周りの人々に翻弄されてしまうような描かれ方をしていた。そんな真っすぐな義経様と愉快な家来たちとの主従関係を超えた信頼関係に魅了され、毎週欠かさず大河ドラマを見ていたのだった。余談だが、現在は表舞台を退き、某芸能事務所の副社長となった滝沢さん。お元気でいらっしゃるだろうか

さて、そのような訳でTSUTAYAへと走り、暇な時間を大いに活用して全話を見返した後、平泉・京都・鎌倉の三本立てにてゆかりの地を巡る旅の計画を立てた。前置きが長くなってしまったが、時系列順に平泉編から書いていきたい。

※展示物等はすべて2013年当時のものです。現地へ向かわれる場合は、必ず最新の情報をご確認ください。

平泉(岩手県平泉町)

JR平泉駅は、東京駅から一ノ関駅まで新幹線で約2時間半、そして在来線に乗り換えて2駅目である。

顔部分が空洞でも寂しくないので、駅名入りの顔はめパネルは嬉しい。このパネル、よく見ると車両の窓部分からも顔を出せるようになっている。芸が細かい。

駅舎を撮影。こじんまりとしているが、とても綺麗で上品な駅舎だった。金色堂を意識してか、金文字の駅名が美しい。

高級旅館や料亭と間違えそうな駅の看板もある。

さて、ここから「中尊寺金色堂」「高館義経堂」「毛越寺」を目指すことになる。一番遠い中尊寺までは1.5km(徒歩20分)。複数個所を回るため、駅のすぐ隣(スワローツアーさん)でレンタサイクルを借りた。当時は3時間500円。平日の朝9時台で誰もいなかったためか、お店のおじさんがとても丁寧に地図にルートや所要時間を書き込んでくれた。

まずは中尊寺の参道入り口へ向かうが、その手前で1か所寄り道をする。

武蔵坊弁慶墓碑

道路脇に突如現れる弁慶の墓。弁慶の身体のような大きな石碑であるが、正面に供えられているお茶のペットボトルからは親戚のお墓感が漂う。ちなみに隣の焼酎のペットボトルはお供えではなく一輪挿しだった。

そのまま目の前にある中尊寺の参道に入る。

中尊寺金色堂

www.chusonji.or.jp

境内はとても広く、金色堂は比較的奥にあるため10~15分程歩くことになる。ただ、途中には本堂や大小様々な御堂、土産物屋、休憩所などもあり、飽きることはない。

入り口に一番近い弁慶堂に立ち寄ってみた。ここは江戸時代に建立され、義経・弁慶の木像が安置されているとのこと。

林の中にひっそりと建っている。ふと横を見ると、味わいのある弁慶顔はめパネルがあった。この汚れ具合が、長年ここで観光客を見守りつつ佇んでいるという趣でとてもいい。ただ、ひとりぽつんと置かれているので、寂しげでもある。

参道に戻り、奥の金色堂を目指す。途中の土産物に目がくらんでしまうといつまで経っても辿り着かないと思う。

ご当地キティちゃん根付(中尊寺バージョン)のみ購入し、無事金色堂へ到着。

金色堂周辺のみ拝観券(大人800円)が必要なため注意。この建物に覆われた中に金色堂がある。建物内は撮影禁止。文字通り全面金色で、光り輝いていた。中には今でも奥州藤原氏の初代清衡、二代基衡、三代秀衡(義経を奥州へ迎え入れた)の御遺体があるとのこと。ちなみに四代泰衡は首だけが納められているが、理由については大河ドラマの最後のほうをご覧ください。

 

高館義経堂

www.motsuji.or.jp

中尊寺参道入り口から自転車に乗り、線路を渡って5分ほどで高館義経堂の拝観券売り場に到着する。ここで300円の料金を支払い、階段を上る。

高台の左手に広場のような場所があり、ここが義経が自害した「最期の地」であると伝えられている。義経を偲んで造られたという義経堂はとても素朴でこじんまりとしており、ひっそりと奥州の地に佇んでいる。

御堂の中を覗き見ると、義経様と目が合う。

そして、そのまま体を右に向けると、美しい景色が広がっている。

奥の山が束稲山、手前の川が北上川。天気が悪いが、パノラマ写真を撮りたくなるほど見晴らしがよい。

また、この場所は、松尾芭蕉がかの有名な句を詠んだ地としても知られている。

夏草や 兵どもが 夢の跡

「おくのほそ道」松尾芭蕉

とても静かで、ゆったりと時間が流れているような場所だった。なかなか立ち去り難く、ついぼんやりと景色を眺めてしまう。

そろそろ天気が怪しいので、平泉駅方面に戻りつつ毛越寺を目指す。

毛越寺

www.motsuji.or.jp

入場料大人700円。浄土庭園と呼ばれる大きな池がメインとなり、周囲を散策できるような造りとなっている。また、この場所は大河ドラマ「義経」のオープニング映像の最後に登場する、白い馬が駆けていくシーンに使われている。

水面をよく見ると分かるが、この辺りで本降りになってしまった。もっとゆっくり見て回りたい気持ちはあるものの、次の目的地への移動時間がそこそこかかるため、平泉はここにて終了。駅へ戻って自転車を返す。初乗り運賃で済んでしまった。

さて、次は平泉駅からえさし藤原の郷を目指すことになるが、目的地の最寄駅は水沢江刺駅という新幹線専用駅であり、ここからまっすぐ向かうことができない。そこで、平泉駅から在来線で3駅北上した水沢駅からタクシーで直接向かうことにした。運賃2,800円。痛い出費だが、必要経費だと思って耐えるしかない。

 

えさし藤原の郷(岩手県奥州市)

www.fujiwaranosato.com

歴史テーマパーク「えさし藤原の郷」。この施設は奥州藤原氏をテーマとした平成5年の大河ドラマ『炎立つ』の撮影を機に整備されたとのこと。その後は一般客に向けた観光施設として開放される一方で、様々な時代劇の撮影にも使用されている。大河ドラマ「義経」では主に京都の街並みのシーンの撮影を行なっている。

入場料は大人1000円。施設内に入るとすぐに平安時代の街並みが広がっており、世界観に入り込める。そして平日・昼間・雨上がりのため人の気配がない。もちろん混んでいないほうが嬉しいのだが、場所が場所だけに異次元に迷い込んだような気持ちになってくる。

高台に登って上から眺めてみたが、やはり閑散としていた。係員のお姉さんが庭の真ん中にぽつんと佇んでいるのだけが見える。ほぼ貸切状態だと分かり、なんだか嬉しくなってきた。

高台には先程平泉で見た高館義経堂を模したと思われる「義経持仏堂」がある。御堂のサイズ感やロケーションは本家にかなり寄せられているが、こちらは義経・弁慶人形が主役として配置されている点が大きな違いである。

御堂の中を覗き見ると、義経様と目が合った。ドラマを見過ぎたためか、もはやタッキーにしか見えない。弁慶はよく見ると背中に折れた矢が一本刺さっている。こちらはマツケンよりはやや若めな印象。

こちらの立派な寝殿造の朱い建物は「政庁」とのこと。中に入ると平安時代の着物や日用品のほか、複数体セットで人形が展示され、当時の生活の様子が再現されている。右の写真は藤原秀衡と共に食事をとる義経。余談だが、大河ドラマの義経もこの人形とよく似た色柄の着物を何度も着用している。

最後に入退場口の近くにある「ロケ資料館」を見る。

館内の壁にはパネルによる写真展示の他、ロケでこの地を訪れた豪華な俳優陣のサイン色紙が飾られていた。時代劇常連のベテランの方々のものばかりかと思いきや、当時20代前半の人間にも馴染みのある方々ばかりだった。驚くことにタッキーのサインもあった。あまりサインを提供しないタイプの事務所なので意外だった。

もちろん大河ドラマ「義経」関連の展示もある。写真入りのパネル1枚に情報が纏まっていてとても見やすい。ガラスケースに台本も展示されていた。見開き1ページが開いてあり中身が見られるのが嬉しい。義経の母・常盤が、源義朝に生まれたばかりの義経の顔を見せるシーンだった。

この後、場外の土産物店を彷徨いていたところ、水沢江刺駅までの無料送迎車があることに気がつき、ありがたく利用させていただいた。貸切状態だった。(※現在は運行していない可能性があるためご注意ください)

日が暮れる前に水沢江刺駅に到着したのは良かったが、遅い時間の指定席券を買ってしまったため、駅で約2時間の待ち時間が発生した。今であれば自由席に乗ってさっさと帰ってしまうが、当時はそんな知恵もなく、幸いにも座る場所があったため、ただただ駅を眺めて時間を潰した。時間は幾らでもあるのだから、それもまたいい思い出である。

その2「京都編」はこちら↓

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