【あたしンち】スドーちゃんから学ぶ、「親友」とは何かということ【けらえいこ】

高校生の主人公・みかんの家族であるタチバナ家の日常を描いた漫画「あたしンち」。全21巻から成るこの漫画はアニメ化もされており、見た目も中身も強烈な個性を持つみかんの「母」についてはもはや国民的お母さんの1人と言っても過言ではありません。

さて、作品内ではタチバナ家の4人を中心として、その周囲の人々の日常についても描かれています。その中でもみかんの弟・ユズヒコ関連の話は、中学生である彼の学校生活が舞台となっています。

あたしンちの全登場人物の中で私が1番好きな「スドーちゃん」は、ユズヒコのクラスメイトの女の子です。

「スドーちゃん」こと「須藤」とは

作品中で明かされている名前は名字の「須藤」のみ。4巻25話から登場します。セミロングの髪にピン止めがトレードマーク。温和な性格で笑顔が多く、男子にも女子にもフラットな接し方をします。

この時点で既に中学生女子としてはよく出来た子だと思いますが、彼女の人間性の高さは、友達である石田への接し方に一番よく表れています。

「石田」とは

石田ゆり。同じくユズヒコのクラスメイトの女の子で、4巻17話から登場します。ショートカットに太い眉が特徴的で、スドーちゃんよりやや小柄に描かれています。

食べ物を口にする前に必ずにおいを嗅いだり、カーテンで手を拭いたり(どちらも4巻25話)、食缶に虫が入っていた給食メニューを気にせず食べたり(6巻31話)という突飛な行動をすることが多く、一部の女子からは勝手なあだ名を付けられ、陰口を言われています。

ユズヒコ『…だが別にイヤなかんじの変さではないが…?』

(「あたしンち」4巻17話)

ユズヒコ目線での印象や以後の登場話を見る限り、空気が読めなかったり、人の迷惑になるようなことをする子では決してありません。人からの目線を極端に気にしないタイプなのだと思います。ただ、それだと中学生女子の間では確実に浮いてしまう

そんな石田の個性に気づいたのが、スドーちゃんでした。

スドーちゃんと石田が仲良くなるまで

須藤「でもフツーの女子は変人を軽べつするからなー」「なぜか」

(「あたしンち」4巻25話)

石田の突飛な行動を面白いと感じたスドーちゃんは、自然と石田と一緒に過ごすようになります。上に挙げたのは、同じく石田に好印象を持ったユズヒコとの会話の一部です。石田の言動をユズヒコと共有し、これは大物になりそうだと一緒に笑ったあと、ぽつりと漏らした言葉です。

この場面でのテーマは「いじめはやめよう」「クラス全員と仲良くしよう」という綺麗ごとではありません。自分が良いと思ったものを、周囲の視線を気にせず良いと言えるか?ということです。

スドーちゃんは、周りの評価がどうであれ、自分が良いと思ったものを良いと発言し、それを行動に移すことのできる子です。大人でも容易いことではないのに、恐らく一番これを実行することが難しい中学生女子という立場でやってのけた子です。人間ができている。尊敬しかないです。

須藤『あんまり変わったことしないほうがいいョ』『…なんて言う権利 私にあるのかな?』『そもそも「変」と「個性的」とはどう違うのよ?』

(「あたしンち」6巻31話)

そんなスドーちゃんでも、食缶に虫が入った給食メニューの一件で悩みます。スドーちゃん自身は問題ないと思い(ユズヒコと藤野も同意見)、先生にも意見したが止められてしまった。そこで納得いかないながらも引き下がりますが、石田は食べ、クラス中からダイレクトに非難を浴びます。自分の意に反していても、ここでは食べないのが「普通」であり、スドーちゃんはそれに従った。しかし石田は従わずに食べ「変な人」というレッテルを貼られてしまいます。それでもスドーちゃんは、理屈ではなくそんな石田が好きなのだという自分の感情に気がつき、以後、石田の行動を「個性」として尊重していくようになります。

ユズヒコたちとの楽しい学校生活

6巻以降では、ユズヒコたち男子も交えて、スドーちゃんと石田が愉快な毎日を送る様子が描かれています。中でも個人的に好きなものを4つ挙げます。

※カッコ内は、既読の人向けにどの話かなんとなく伝わるよう勝手に付けたキーワードです。

・8巻26話(ルーズリーフの糊)

ユズヒコに恋する女子・川島が、クラスのかわいい子を真似て気を引こうとするのですが、ユズヒコの気を引いたのは…。

・9巻23話(ウソを付け)

石田の突飛な発言になぜか付いて来られるユズヒコ。

・16巻8話(コンタクトなだけに)

スドーちゃんのメガネに萌える藤野の話かと思いきや、オチも含めて正統派な面白さ。

・17巻4話(妄想のハンバーグ)

ハンバーグが食べたいのに給食は筑前煮。石田の立ち位置が珍しいパターン。

伝説の21巻32話

そして最終巻、物語全体の締めを目前とした21巻32話で、スドーちゃんと石田の関係も大団円を迎えます。

石田は人からの目線を極端に気にしないタイプであり、奇行が多い傾向にはありましたが、聡明な子であることは今までのエピソードを読めば分かります。ただ、その聡明さは我々読者の想像を大きく超えていました。自分の立ち位置や置かれている状況をすべて理解した上で、日々の生活を送っていたんだなと。石田のセリフの一部をここに引用しようか迷ったのですが、この話だけはやめておきます。

安易に「親友」という言葉を使いたくないですし、使いたがる人をあまり信用していませんが、この2人の関係性は「親友」と言い切っていいものだと思います。

あたしンちベスト④「ユズヒコ友情編」

この記事で挙げたエピソードは(「ユズヒコたちとの楽しい学生生活」で挙げた4話以外)、すべて全10冊のよりぬきベスト版4巻にまとめて収録されています。スドーちゃんと石田の重要なエピソードをもれなく採用しつつ、ユズヒコの学生生活が1冊に濃縮されており、大変お得です。

【おまけ】スドーちゃんと藤野

スドーちゃんに恋する、ユズヒコの友人・藤野。スドーちゃんに関することになると急に挙動不審となる様子(11巻23話など)が微笑ましい。ただ、相手はよく気が付くスドーちゃんなので、恐らく藤野の気持ちに勘付いています。そのことが分かる21巻19話も、スドーちゃんの良さを語るうえで外せないエピソードです。

 

全21巻で一区切りついた「あたしンち」ですが、近年は発表形態を変えて連載を再開しており、単行本も既に1冊出ています。

ユズヒコは勿論ですが、スドーちゃんと石田も変わらず登場しています。今後も彼らの楽しい学校生活を覗かせて貰えることを楽しみにしています。

 

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