夏の書店の風物詩と言えば、大手出版社3社の特設ブースと小さなあの冊子です。今年も集英社文庫、角川文庫、新潮文庫が夏のフェアを行っています。
その中で、キャラクターのキュンタが可愛い新潮文庫の100冊より、ミステリ系の小説5つを以下にまとめます。
- 「シャーロック・ホームズの冒険」コナン・ドイル
- 「江戸川乱歩傑作選」江戸川乱歩
- 「向日葵の咲かない夏」道尾秀介
- 「満願」米澤穂信
- 「許されようとは思いません」芦沢央
- 【おまけ①】「燃えよ剣」司馬遼太郎
- 【おまけ②】キュンタが可愛い
- 【おまけ③】キュンタのしおりが欲しかったので
「シャーロック・ホームズの冒険」コナン・ドイル
君はただ眼で見るだけで、観察ということをしない。見るのと観察するのとでは大ちがいなんだぜ。
コナン・ドイル(延原謙 訳)「シャーロックホームズの冒険」ボヘミアの醜聞より
ご存知シャーロック・ホームズ。新潮文庫から出版されている短編集のうち「冒険」がフェアの対象です。短編10編が収録されています。ホームズは1つ1つの事件も面白いのですが、事務所を訪れた依頼人の見た目を観察し、その人の素性や行動を推理して言い当てるお決まりの流れが好きです。
★次の1冊
新潮文庫のホームズシリーズは全10作。電子書籍だと合本もあります。
「江戸川乱歩傑作選」江戸川乱歩
私は数か月のあいだ、全く人間界から姿を隠して、ほんとうに悪魔のような生活を続けてまいりました。
江戸川乱歩「江戸川乱歩傑作選」人間椅子より
こちらもフェアの常連、江戸川乱歩傑作選です。この短編集1冊に9編が収録されており、タイトルだけ何となく聞いたことのあるような、代表的な作品が網羅されているのが嬉しい。上の引用文は1番好きな「人間椅子」からです。ゾクゾクする告白文からオチへの流れが綺麗にまとまっていますが、結末がはっきりと明示されていないところが怖い。
また、倒叙ミステリ(犯人の視点で描かれている小説)があまり好きではない私でも、何故か読み心地良く感じる「心理試験」や「屋根裏の散歩者」もおすすめです。
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他社(RP文庫)ですが、電子書籍だと99円で110作品読める作品集があります。
「向日葵の咲かない夏」道尾秀介
この世界は、どこかおかしい。
道尾秀介「向日葵の咲かない夏」
この一言に尽きる作品。
有名作であるため、肝となる部分のネタバレをうっかり知ってしまった上で読みました。知らないまま読みたかった。殺人事件の真相と、どこかおかしいこの世界の謎が絡まり合い、物語を複雑にしているため、普通ならば気が付きそうなことを見落としてしまうのかもしれません。
夏が舞台の小説ですが、決して爽やかではない。じっとりとした暑さと生臭さが何処からか漂ってくるような読了感です。
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他社(文春文庫)ですが、こちらの短編集もおすすめです。各話のラストが必ず図や写真1枚のページとなっており、目で見ることで「そういうことか…」と視覚的に種明かしされる、面白いつくりになっています。
「満願」米澤穂信
あたしはね、しょせん関守です。この店に来てもらわないことには何も出来ません。
米澤穂信「満願」関守より
毛色の異なる短編6編が収録されています。引用文に選んだのは峠にある寂れたドライブインが舞台の「関守」です。車が何度も崖下へ転落する謎を追い求め、おばあさんがたった1人で経営するドライブインにやってきた主人公。この峠は心霊スポットなのか、それとも…
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同じく新潮文庫の短編集。5編収録のうち、「玉野五十鈴の誉れ」は、小栗家のお嬢様・純香に使える愚直な使用人・玉野五十鈴の物語です。玉野五十鈴の誉れとは一体何なのか。読み終えたあと、ネットで考察を探してみると二度楽しめるかもしれません。
「許されようとは思いません」芦沢央
「私は自分の意思で殺しました。許されようとは思いません」
芦沢央「許されようとは思いません」表題作より
短編5編が収録されている短編集。表題作「許されようとは思いません」は、主人公の諒一が恋人の水絵と、祖母が生前暮らしていた村を訪れる話です。小さな社会の中で村八分となり、そして殺人犯となった祖母。なぜ祖母は寿命僅かな曾祖父を殺し、裁判で背筋を伸ばしたのか。冒頭、水絵がやたら結婚の話をしていることにも、じつは意味があります。
★次の1冊
文庫ではありませんが、こちらもおすすめ。将棋とミステリの掛け合わせが斬新です。短編5編のうち、冒頭の「弱い者」は将棋のプロが指導対局のため被災地の避難所を訪れる物語。希望のあるラストではありますが、ずっと心にしこりが残るような読了感です。ある意味では今がタイムリーな話なのかもしれません。
【おまけ①】「燃えよ剣」司馬遼太郎
↓ ミステリではありませんが、こちらもどうぞ。原作の感想も兼ねています。
【おまけ②】キュンタが可愛い
キュンタは、ある日おじいさんの経営する小さな本屋さんにやってきた小さなロボットです。本を読みつつ、分からないことはおじいさんに教わりながら、人間のことを少しずつ学んでいきます。
本屋の店頭で配布される冊子に書かれているストーリーを、キュンタがやってきた2015年以降の分すべて読むことができます。今年はおじいさんの本屋で店番をする話です。客が全員動物でかわいい。特にメガネのライオンさんが知的で素敵。ちなみに、2019年「キュンタの夏休み」paet6が個人的に一番好きです。
キュンタかわいいなぁと特設ページを見ていたら、フリーイラストページがあって驚いた。宣伝が上手すぎる。遠慮なく使わせていただきます。


【おまけ③】キュンタのしおりが欲しかったので
手元にあった「シャーロック・ホームズの冒険」が光文社文庫だったため、今回の限定カバーを買いました。厚みのある紙の手触りが心地良い。また、今年のキュンタのしおりはステンドグラス風でとても綺麗なデザイン。思わず写真に収めたくなるのでやはり宣伝が上手い。
ミステリ系小説のまとめと見せかけて、いつの間にかキュンタがかわいい話になってしまった。