今週のお題「本棚の中身」
30代になった。
これからどんな仕事がしたいか、昇進したい気持ちはあるか、結婚については考えているのか、子供が欲しいか……それなりに計画的に生きてきたつもりではあったが、将来の展望については全くないと言ってもいい。あまり具体的に決めすぎると、それが上手くいかなかったときに心を病んでしまうのではないか、という恐怖も感じている。
ただ、無責任に抱いている夢が1つだけある。
いつか自宅の一部屋すべてを本棚で埋めてみたい、ということだ。
大学生の頃、ジュンク堂書店の大型店舗に憧れ、2つ並べると縦横2メートルの大きさとなる本棚を購入した。地震のたびにヒヤヒヤしているが、すべて本で埋めた状態はとても壮観である。普段はカーテン代わりの布を付けているが、それを外して本棚の正面に立ち、ニヤニヤしながら眺める時間は至福だ。
それほど大切な本棚だが、引っ越しを伴う転勤の多い仕事に就いてしまったため、毎度すべての本を十数箱の段ボールに詰め、棚板をすべて外し、引越業者のお兄さんを半泣きにさせながら持ち運んでいる。棚からはみ出した本は所持できないため、泣く泣く手放している。
最近はKindleに魂を売り渡しており、読書時間の99%は電子書籍を眺めている状態だが、それでも大切な本は紙の状態で本棚に並べたい。
どうしてここまで本棚に執着するのだろう。
大学時代に書店で出会い、それ以降大切に愛読している本がある。
読了してふと気づいたことがあった。
自宅の本棚を紹介している著名人の方々は皆、企画のテーマに沿って本棚にまつわるエピソードを語っているのだが、その内容がいつの間にかその人の半生にすり替わっているのだ。
本と共に人生を歩んできたような方々ばかりなので当然のことかもしれない。
けれど、自分の本棚が、この時からただの「本を収納する木製の家具」ではなくなったことは確かだ。
今の自分のキャパシティを考えると、縦横2メートルの本棚の中身を泣く泣く厳選しているくらいが丁度よいのかもしれない。でも、いつかは広めのウォークインクローゼットくらいの部屋にびっしりと並んだ本棚を、とっておきの本でぎっしりと埋めたい。お気に入りを泣きながら選べるくらい、沢山の作品との出会いがあるといい。