最終更新日:2023.4.30
シリーズ30周年を記念して連載されていた「金田一少年の事件簿30th」が、掲載誌『イブニング』の休刊と共に完結しました。
そして、4月末より連載の場を漫画アプリ『コミックDAYS』に変え、37歳になった一(はじめ)が主人公のシリーズ「金田一37歳の事件簿」が再開されています。
※連載再開により美雪の消息が判明しましたが、まだ明らかになっていない部分も多くあるため、以下は13巻までの情報に基づく考察としてこのまま残しておきます。
37歳のはじめはうだつが上がらないサラリーマン。安アパートで一人暮らしをしているようです。側に美雪の姿はありません。大手航空会社のチーフパーサー(CAを統括する役職)として世界を飛び回る美雪は、はじめが他の女性に鼻の下を伸ばしかけた絶妙なタイミングで連絡を入れてくるという驚きの勘の良さを発揮しています。
37歳のはじめと姿を見せない美雪は、一体どのような関係性なのか。
個人的な見解としては、「美雪の身を守るため、結婚や同居の選択肢が取れない」のかなと思います。
以下、この考えに至った経緯です。
(現行13巻までのネタバレを含みます)
すべての鍵となる「玲香ちゃんの事件」
「…あれ以来 事件とか関わらないようにしてきたんだけどね」『金田一37歳の事件簿』7巻より
はじめは37歳になっても相変わらず次々と事件を引き寄せているのですが、異常なほどに事件と関わることを嫌います。そのような態度を取るようになったのは、かつてアイドルだった玲香ちゃんが巻き込まれたある事件がきっかけのようです。
「指折り数えても足らない」くらいの年月が経ったある日、はじめと玲香ちゃんは再会します。この場面で判明したことは以下の3点。
- 玲香ちゃんには、もうすぐ高校生になる息子(15歳?)がいる
- 「息子さんのお父さん」が何らかの状態に陥っている
- このことにはじめは負い目を感じている
はじめの尋ね方からすると、「息子さんのお父さん」は死亡したのではなく、行方不明や意識不明の可能性が高そうです。また、玲香ちゃんは否定しますが、はじめが謝罪の言葉を口にすることから、はじめが関係した事件により被害を受けたものと思われます。
はじめ37歳の言動を振り返る
親しい友達に対して (草太、佐木)
草太「七瀬さんにバレないようにな」はじめ「は?なんだよそれ!?」『金田一37歳の事件簿』1巻より
主要登場人物にも容赦がないことでお馴染みの金田一シリーズで、この2人は命を落とすことも逮捕されることもなく30代半ばまで生き長らえたようです。
さて、飲み屋でのこの会話。はじめが若い女性の後輩と泊りがけの出張へ行くことを2人にからかわれている場面の一部です。草太ははじめが後輩に手を出さないよう、美雪の名前を出して牽制しています。
定期的に集まるこの3人の中で、はじめと美雪は(高校時代と同レベルかもしれませんが)ある程度の親しさをキープしていることを前提として話しており美雪死亡説はさすがに無いと言っていいでしょう。そもそも本格ミステリ漫画なのだから、超常現象(霊界から連絡が来ている)だけは絶対にやめてほしい。
久しぶりの知人に対して (真壁先輩、いつきさん)
真壁「なぁ……七瀬さんとはどうなったの?」
はじめ「いや……その話はやめましょうよ!ね!」
『金田一37歳の事件簿』4巻より
一方、久しぶりに再会した真壁先輩やいつきさんに対しては、ひたすら美雪の話をはぐらかす傾向にあります。「相変わらずです」や「そんな関係ではないです」などと言えば済むものを不自然に誤魔化していることから、答えたくない何かがあるのではないかと思います。
いつき「(前略)お前の方はどーなんだ?」
はじめ「どっ…どーなんだと言われましても…」
『金田一37歳の事件簿』5巻より
女性の部下に対して(まりん)
ある事件(5巻収録)の際、はじめは部下の葉山まりんとやむを得ずラブホテルに宿泊することになります。当然ですが何事も起こりません。上司としては満点ですが、高校時代から「据え膳食わぬは男の恥」をモットー(?)としていたはじめにしては紳士的すぎます。誰かに義理立てしなければいけないのかもしれません。
この関係性には前例がある
はじめと美雪の様子を見て、思い出したある別の漫画があります。同作者によるもう1つの名作「探偵学園Q」です。
※以下、探偵学園Qのネタバレを含みます。
主人公・キュウの父親は探偵でしたが、悪の組織と戦う際、身内に危害が及ぶことを恐れ、キュウの母親と籍を入れないことを選択しました。それ以来、キュウの母親は女手一つで息子を育てています。
はじめと美雪も、このケースと同じなのではないでしょうか。
「玲香ちゃんの事件」で、いつものようにはじめが謎を解いたことが原因となり、はじめの親しい友人であるアイドルの速水玲香が引退に追い込まれるほどの大変な被害を受けてしまった。
何よりも大切な存在である美雪を失うわけにはいかない。
もう謎は解きたくない。
だから殺人事件とは縁のない仕事を選び、のらりくらりと美雪との仲をはぐらかしながら生きている。
キュウの父親とは違い、職業探偵ではないはじめがそこまでする必要性はあるのか、という疑問もありますが、現に29歳のフミがはじめの従妹であるというただそれだけの理由で酷い目にあっている(11巻参照)ことを踏まえると、美雪の存在を隠したくなる気持ちも理解できます。
以上です。
と締めたいところですが、最後にひとつだけ。
今まで「何か理由があるのではないか?」という体で話を進めてきました。しかし、フィクションの世界とはいえ、このご時世に「37歳なら結婚して子供がいて当たり前!していないのは何か理由があるのではないか?」という考えを押し付けるつもりは一切ありません。
普段は抜けているけれど、事件現場では持ち前の推理力を発揮し、見違えるほど頼もしいはじめ。
はじめの手綱を握るしっかり者の美雪。
そんな2人が大好きなので、37歳になっても変わらずそのままの関係性でいてくれたことが何よりも嬉しい。
どんな形であれ、2人には末永く仲良く、幸せになって貰いたい。ただそれだけです。