ひとりクローズドサークル

好きなものに対する思いをひっそりと呟くブログ

【GALS!! (続編)】渋谷のカリスマ・寿蘭の幸せとは何なのか?【藤井みほな】

田舎生まれ田舎育ちの私ですが、小学生の頃、渋谷のギャルに憧れたことがあります。かといって、実際にギャルの皆さんと接点があった訳ではありません。1998年から2002年に連載されていた少女漫画「GALS!」の影響です。同じ経験をしたアラサー世代の方も多いのではないだろうか。

この漫画は1990年代後半から2000年代前半までのコギャル文化をテーマとしています。当時の渋谷の様子や彼女らのファッションがとても丁寧に描かれており、それに加えて作品に登場するギャルたちがとても個性的であるところが魅力です。一口に「ギャル」と言っても皆が同じような格好をしている訳ではなく、好きな服装、ものの考え方、抱えている悩み、恋愛の仕方など、それぞれ全く違う女の子同士が個性を認め合いつつ、「ギャル」という同じマインドで繋がっているところが好きです。

otekomachi.yomiuri.co.jp

2019年に渋谷109の40周年記念として作者の藤井みほなさんが書き下ろしたコラボ漫画をきっかけとし、漫画アプリ「マンガMee」にて連載されていた続編が先日完結しました。前作は2002年3月、主人公の蘭が高校を卒業した時点で完結していますが、続編はその続きから描かれています。

続編の見どころとしてはもはや別人のレベルで綾にデレている乙幡が話題ですが、個人的には、コギャル時代はスーパーポジティブでやや能天気(失礼)な部分が目立っていた主人公・蘭の「苦悩」がより濃く描かれている点が興味深く、良い意味で蘭へのイメージが変わった作品でした。

※中盤までのネタバレを含みます。

蘭は「変わらない」

高校卒業してもなお、渋谷ギャルのカリスマとして君臨し続ける主人公・蘭。彼女はポジティブで揺るぎなく、安定感のあるキャラクターですが、その理由としては以下の2つが挙げられます。

  • 自己肯定感が高く軸がぶれないこと
  • 恋愛に対する優先度が低いこと

彼女のポリシーである「自分サイコー」「渋谷サイコー」という土台は前作からずっと変わりません。読者としては安心して見ていられる。

また、少女漫画のため登場人物の殆どが恋愛の悩みで右往左往している中、蘭は無自覚のうちに人を惹きつけ他のカップルに波風を立たせたり、パートナーと恋愛の優先度が異なることでトラブルに発展したりすることはありますが、彼女自身が恋愛方面で思い悩むことは滅多にありません。

ただ、さすがに彼氏のタツキチとその幼馴染であるナツの急接近に気付いた際には、思わず立ち止まってしまいます。

「あたし…相手に合わせて自分を変えるとかできねーしさ…」

「――おまえは変わらないんだからそれでいいんじゃねーの 無理に変わる必要もねぇし」

藤井みほな『GALS‼︎』2巻

相談相手となった乙幡も蘭と同様、自分に自信があることで軸がぶれず、恋愛では人を振り回す側の人間です。作中世界では一番よく蘭の苦悩を理解できる立場かもしれません。

蘭とタツキチの「住む世界」の違い

町田でラーメン屋を営む、蘭の彼氏・タツキチの父。妻に先立たれた彼は身体の不調に悩まされており、店の経営を2人の息子に依存しながら続けている状態です。ただ、息子達のうち、弟のナオキチは高校生。実質、兄であるタツキチ1人に負荷がかかることになります。

ラーメン屋を継いで欲しい父と、蘭と一緒に警察官になりたいタツキチ。そんなタツキチの様子を見かねて、父は苦言を呈します。

「たしかにあの寿蘭という子はいい子だ 利発で明るく器量もいい だがな お前とは住む世界が違うんだ

「(中略) おまえは彼女の中に母さんを見てるだけだ 憧れを愛と履き違えるな」

藤井みほな『GALS!!』4巻

息子を自分の所有物のように扱うタツキチの父。決して褒められた人間ではありませんが、父の口を借りた「第三者の目線からの忠告」として見るとかなり痛いところを突いている。

今作では蘭たち「渋谷組」とタツキチたち「町田組」の格差を感じる面が多々あり、容赦なく突きつけられる現実に、読者としても考えさせられるところがありました。もう子供ではないのだから、現実からは目を背けられない。

蘭の「幸せ」とは

この先は単行本未収録、アプリのみで読める部分です。

「先輩はこれから警察官になって更にたくさんの人々を救うでしょう だからこそ 先輩には誰よりも幸せになってほしいです!」(中略)

「ありがとな匡斗 心配すんな!あたしはいつでもハッピーだ!」

藤井みほな『GALS!!』14話 心のまま ①

個人的に続編で1番好きな場面。沙夜(蘭の妹)の彼氏である匡斗が、尊敬する蘭へ素直な思いを伝えるシーンです。匡斗がとても好青年であることに加え、蘭の返しが「蘭らしさ」に溢れておりとても格好いい。

そして沙夜・匡斗と別れた後、後ろ姿で語る蘭のモノローグに心を打たれました

……ただひとつ あたしに 悩みがあるとすれば

なにが 自分の幸せか 分かってることだ

藤井みほな『GALS!!』14話 心のまま ①

容姿にも家庭環境にも恵まれた、自己肯定感の高いカリスマギャルである蘭。自由奔放ではありますが、決して驕り高い性格ではなく、みんなが幸せなら自分も幸せという思いから、自分の幸せよりもみんなの幸せを優先してしまうところがあります。そもそも、あんなにも反発していた親と同じ道である警察官を目指すようになったきっかけも、私利私欲ではなく「大好きな仲間たちのいる渋谷の街を守りたい」からでした。

そんな蘭が、匡斗の願い通り「幸せ」になるためにはどうすれば良いのか。読者よりも蘭本人が1番よく理解しているようです。

最終話へ

※結末の展開に触れている表現があるため、未読の方はご注意ください。

 

結末の展開については賛否両論あるようですが、続編の展開を踏まえると、いずれ「この日」が来るだろうという心の準備ができていたため、個人的にはすんなりと納得できた結末でした。ただ「この日」が唐突に訪れたことについてはかなり驚かされました。まだ7合目くらいかと思っていた。

東大生となり、高嶺の花であった乙幡と大人の階段を上る綾。渋谷109セシルマグビーの店長となったマミリン。妻となりやがて母となる美由。周囲の肩書きの変化が華々しく著しいので目移りしがちではありましたが、最終話まで読むと、この続編は紛れもなく主人公である「蘭の成長」を描いた物語だったのだなと改めて感じました。

何年か後、立派な警察官となった蘭とまた会える日を楽しみにしています。

manga-mee.jp

nasuno261.com

nasuno261.com